約 1,319,990 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1273.html
過酷な状況であっても、目を閉じれば、否応なしに眠りの世界へと誘われる。 廊下で毛布にくるまって、既に1時間。 ようやく僕の意識も眠りの世界へつこうとしていた。 ちなみに隣の才人は、あれだけ寒い寒いと文句をたれていた割に、10分そこそこで寝てしまった。 全く以て、その順応性の高さには恐れ入る。 きっと枕が変わって眠れない等ということは、全く縁のない男なんだろう。 「おいおい、ルイズ。また、眠れないのか?」 「なんだよ、また添い寝して欲しいのか?」 「やっぱり甘えん坊さんなんだなぁ、ルイズは」 しかし、この寝言は何とかならないのか? 才人は寝てからずっとこんな調子で、ピンクな寝言を横で垂れ流している。 いわれた通り、本当に夢の中で暖めて貰う奴があるか! ……いっそ、たたき起こしてやろうか? グニュオ 「へっ、お返しだ。こっちから抱きついてやったぜ」 ……最悪だ。 才人が何かほざきながら、僕に抱きついてきた。 気色悪すぎるッ! せっかく眠りにつく一歩前までこぎ着けた僕の精神は、才人の所為で完全に覚醒してしまった。 「いつまで寝ぼけてるつもりだッ!」 「オグェッ!」 密着状態な為、身体が動かせない僕は、スタンドで思いっきり才人の腹に一撃を加える。 才人はカエルがつぶれたような声を出して、ぴくぴくと震えている。 が、起きてくる気配はない。 失神したのか? 「へへへっ、照れ隠しかよ……」 ちょっと胃液混じりの涎を吐きながら、才人は未だたわけた夢を見ている。 少しばかり殺意が沸いた。 それはともかく、コレじゃあいつまで経っても眠れない。 とりあえず、才人を拘束しておこう。 「『タイラップスネーク』ッ!」 僕は自分のスタンドをひも状にほどき、毛布と一緒に才人を縛り上げ、団子状態にする。 とりあえず、コレで窒息寸前まで放置してやる。 「わあああ、ま、待てルイズ! 俺が悪かった! だから生き埋めは止めてくれ!」 どうやら夢の中でも窒息したようだ。 暫く、そのままの状態で反省していろ。 「しかし、完全に目が覚めてしまったな……」 強引に起こされた所為で、眠いのに寝られない。 仕方なく僕は、窓から顔を出して、二つの月を眺めることにした。 ボーっとしていれば、またそのうち眠くなるだろう。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 暫くボーっとしていたが、どうにかいい感じで眠れそうだ。 僕の意識がもう一度、眠りの世界へとさしかかろうとし始める。 やっと寝られる。 僕は身体を引きづりながら、所定の寝床へとたどり着く。 ちなみに才人入り毛布団子は、もはや何の反応も示さなくなっている。 ……流石にこれ以上はマズイか。 僕はタイラップスネークを解いて、毛布を元の状態に戻す。 中に入っていた才人は、うつぶせのまま、ピスピスとわずかな呼吸音をならすだけだ。 もう寝言は聞こえない。 よし、今度こそ寝られるな。 僕は毛布と布団で身体を包み込み、寝袋のようにして地面に身体を横たえた。 さあ、後は目を閉じるだけだ。 僕は全身の力をゆっくりと抜く。 そして瞼を少しずつおろそうとした所で、丁度、目の前のドアが開いた。 確かあそこは、キュルケとかいう女性の部屋だったな。 そしてその開いたドアから、昨日の朝見たサラマンダーが顔を出す。 その部屋の主であるキュルケに、フレイムと呼ばれていたそのサラマンダーは、人なつっこい声できゅるきゅると鳴き、僕の方へと近づいてきた。 小型の虎ぐらいある蜥蜴だ。ちょっとしたことでも、危ないことになる。 仕方なく、僕はその横たえていた身体を起こすことにした。 どうやら今日、僕は眠れない運命にあるらしいな。 どうせ、ゲームを買うのに徹夜したこともあるんだ。 いっそ、起きておこう。 僕は開き直って、徹夜という選択肢を選ぶことにした。 「何なんですか?」 僕は目の前のフレイムに語りかける。 使い魔というからには、人語を解するくらいの頭はあるだろう。 そう、ふまえての行動だ。 フレイムは再び、きゅるきゅると人なつっこい声で鳴き、僕の服の袖を加え、くいくいと引っ張ってきた。 「ついて来い……ということですか?」 フレイムはその言葉を肯定するように、首を振る。 そしてフレイムは僕を、自分が出てきた部屋、つまりキュルケの部屋へと引っ張ろうとする。 一体、彼女が何のようなんだろうか? そもそも、まともに話してすらいないと思うのだが。 しかし抵抗しようにも、相手は小型の虎ぐらいある蜥蜴だ。 確実に服がちぎれる。 僕は案内されるがまま、フレイムの主が入る部屋へと足を進めた。 キュルケの部屋は、明かり一つついていない、真っ暗な状態だった。 かろうじてフレイムの尻尾の火の周りだけが、ぼんやりとした明るさを持っている。 「扉を閉めて?」 暗がりの中から声が聞こえる。 この部屋の主、キュルケのものだろう。 ともかく、風が入ってきては寒い。 僕は言われた通り、後ろ手で入ってきたドアを閉めた。 バタンという音が部屋に響く。 それを聞いて、キュルケが何かを言い出す前に、僕は先手を切って、暗がりの方に訪ねた。 「一体、何の様なんだ?」 「もう、せっかちさんね」 キュルケは別に気にした風でも無い声で、返答する。 続けてパチンと、キュルケが指を弾く音が聞こえた。 すると、僕の入ってきたドアに最も近いロウソクから順に、一つずつ明かりが灯されていく。 何度かルイズの部屋でも見たが、便利なものだ。 そんなことを考えている内に、明かりはぼんやりとした光の道になって、キュルケまでの道を照らし出す。 照らされた先には、メロンおっぱい、あ、いやいや、ベビードールと呼ばれる下着を着たキュルケがいた。 そのメロンおっぱいは、見事にレースのベビードールを持ち上げている。 ブラボー! おお、ブラボー! しかし、そんなことはおくびにも出さない。 僕は二枚目キャラなのだから! (才人とは違う) 僕はゆっくりと、キュルケと話すにふさわしい距離まで寄っていく。 丁度キュルケの手前、1mぐらいのところで、僕は足を止める。 ロウソクのわずかな光に照らされ、余計に艶めかしさが強調された身体に、僕は思わずつばを飲んだ。 色っぽい匂いの香水が鼻を支配する。 女の子に迫られたことや、告白されたことはあるが、こんな状況は流石にない。 どこぞのフランス人では無いが、頭がどうにか成りそうだった。 キュルケは、そんな僕の様子を知ってか知らずか、大きくため息をつき、悩ましげに首を振って話し出す。 「あなたは、あたしをはしたない女と思うでしょうね。思われても仕方がないの。わかる? 私の二つ名は『微熱』」 どうやら彼女は演出を大切にするタイプらしい。 僕の様子に関係なく、少々芝居がかった口調で、口上を続ける。 しかしながら、そのあふれんばかりの色っぽさばかりが強調され、話の半分も頭の中に入ってこなかった。 「……二つ名の『微熱』は、つまり情熱なのよ!」 なんとか頭に入ってきた言葉をまとめると、要するにギーシュを倒した時の僕の姿を見て一目惚れをした。ということらしい。 ディ・モールト解りやすい。 「本当に、あたしってば、みっともない女だわ。そう思うでしょう? でも全部あなたの所為なのよ? さて、ここで僕はどうすればいいのだろう? もし、これが普通の告白であるならば、こういう惚れっぽい子の告白は、適当なことを言うか、ばっさり言って断るのだが。 こんな想定外の事態に、僕の能は完全にフリーズしていた。 正直、困るのだが、どう断って良いのか、皆目見当もつかない。 そんな風に黙っている僕の姿を肯定と受けたのか、キュルケは顔を僕の方へと顔を寄せ、キスの体勢を作る。 僕はなんとか再起動を果たし、キュルケの肩に手を置いて押し戻す。 しかしぎこちない動作で行ったそれは、返ってあらぬ事態を引き起こした。 「きゃっ!」 「うわっ!」 僕の下にキュルケの顔が見える。 僕はベットに四つんばいの体勢になっている。 僕はキュルケの肩を持っている。キュルケはベットに倒れ込む。 つまり……押し倒す姿勢になるな……。 「あ~ら、随分情熱的で激しいアプローチね」 「OH! MY GOOOOOOOD!」 ああああああああああああ! 違う! 僕はこういうキャラじゃない! ああああああああああああ! 違う! 僕はこういうキャラじゃない! 僕は起死回生を求めて、窓を見た。 「キュルケ…… 待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば……」 そこにはルックスもイケメンだ。な男が一人、浮いていた。 「ペリッソン! えーっと…… 二時間後に」 「話が違う!」 キュルケはベットを転がって僕から逃れ、そのメロンおっぱいの谷間から派手な杖を取り出す。 そしてうるさい蠅でも払うように、杖をふるった。 するとロウソクから日が伸び、窓ごと、イケメンを吹き飛ばした。 イケメンは、そのままくるくる回って蚊のように落ちていく。 ……ここは三階のハズだが……大丈夫なんだろうか? 「まったく、無粋な梟ね」 「……今の、誰ですか?」 「彼はただのお友達よ。ともかく………」 友達がこんな時間に、窓からこんにちわ。などと言うわけ無いだろう! つまり、彼女は今、堂々と二股をかけようとした訳だ。 ビィィッチ! その後も、5人ほどの男が、その窓から顔を出す。 そのたび、キュルケは杖をふり、時にはフレイムに任せて、蚊トンボのようにたたき落とす。 とりあえず、解っただけでも僕を含めて、六股をかけようとしていた訳だ。 もしこの姿を見られれば、間違いなく100年の恋も冷めるだろう。 付き合っていられるか…… 僕はキュルケに気づかれないように、部屋のドアに手をかけようとした。 しかし、それよりも早くドアが開けられる。 嫌な予感が、僕の背中を走った。 ドアを開けたのは、予想通り、ルイズであった。 後ろには才人もいる。 「ツェルプストー! あんた、誰の下僕に手を出してるのよ!」 「仕方ないじゃない、好きになっちゃったんだもん」 いや、そういわれても正直困る。 六股は勘弁だ。 僕は才人の方を見る。 才人は何もせず、ただニヤニヤと僕の方を見ていた。 助けるつもりは毛頭無いようだ。 後で覚えていろ…… さてあの後、名残惜しそうにこちらを見つめる、キュルケのいる部屋を後にして、僕はルイズの部屋の床に座らされた。 才人はというと、相変わらずニヤニヤとこっちを見ている。 そして僕はルイズに延々と、ルイズとキュルケの家の因縁を聞かされることと成ったのだ。 これも全部、才人が抱きついてこなければ……! 恨めしい目つきで、僕は才人の方を見る。 才人は既に、部屋の中で気持ちよさそうな寝息をたてていた。 僕はそんな才人を見て、明日、ハイエロファントグリーンで操って、便器でも舐めさせてやると心に誓うのだった。 To be contenued……
https://w.atwiki.jp/shfarts/pages/828.html
マシンゼロホーン 商品画像 情報 登場作品:仮面ライダー電王 定価:4,536円 受注開始:2014年01月24日(金) 16 00 受注締切:2014年04月06日(日) 23 00 発送開始:2014年06月21日(土) 商品全高:約150mm 付属品 その他:交換用手首左右各2種(アルタイルフォーム、ゼロフォーム用)、交換用ミラー左右各1種、交換用ハンドル左右各1種、固定用台座 アイテム概要 ゼロライナーの運転席を兼ねるバイク型のコントローラー。ゼロノスカードやライダーパスをキーボックスに差し込むことにより起動する。電王のマシンデンバードと外見、スペック、機能は同じだが、後部の集電装置・ゼロギャザーの形状と、フロント部にタンクローリーさえも一突きにする突撃攻撃用の2本の角・ゼロゼロホーンが装備されている点が異なる。『EPISODE RED』では、ベガフォームの変身解除の時、デネブが運転したことがある。 商品解説 TAMASHII NATION 2012で参考出品された試作品が魂ウェブ商店限定発売決定。 良い点 悪い点 不具合情報 関連商品 仮面ライダーゼロノス アルタイルフォーム 仮面ライダーゼロノス ゼロフォーム マシンデンバード コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4610.html
甲賀忍法帖より甲賀弦之介 ゼロの視線-01 ゼロの視線-02 ゼロの視線-03 ゼロの視線-04 ゼロの視線-05 ゼロの視線-06 ゼロの視線-07
https://w.atwiki.jp/flowershop/pages/7.html
花言葉&種類リスト ○はじめに 花言葉というのは、本などによってその意味や内容が違ったりします。 このページに掲載してある花言葉はネットなどで紹介されている花言葉を使ってたり、それらを組み合わせて創作したものもあったりします。 そのためこちらに掲載してある花言葉が絶対というわけではありませんので、その点をどうかお気をつけください。 ○品種名:花言葉 バラ:「愛」 ゼラニウム:「決意」 カーネーション:「敬愛」 ヒマワリ:「光り輝く貴方を見つめていたい」 チューリップ:「博愛」 トルコキキョウ:「優美」 ユリ:「無垢」 ガーベラ:「神秘」 スイートピー:「優しい思い出」 胡蝶蘭:「貴方と共に踊ります」 スミレ:「小さな幸せ」 カスミソウ:「清らかな心」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1467.html
「金色のガッシュ・ベル」のデュフォー ゼロの答え-01 ゼロの答え-02 ゼロの答え-03 ゼロの答え-04 ゼロの答え-05 ゼロの答え-06 ゼロの答え-07
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1211.html
「驚いたわねー…」 ルイズの部屋の外にシルフィードが浮かび、その上には例によってキュルケとタバサが乗っている。 どうも、五月蝿かったので様子を覗いていたらしい。 「そりゃあ、貧弱貧弱ゥゥなルイズよ?でも、アレを見ても動揺一つすらしないなんて」 タバサは例によって興味なさそーに本を読んでいる。 まぁ今まで着替えを渋々やらされていたからなのだが、それはキュルケの知らない事である。 「興味が無いってわけじゃないんでしょうけど…さっきもメイドと何か話ししてたし…何だかルイズが可哀想になってきたわね…」 思わず涙が出そうになるが、何かタバサも睨んでいるような気がしたので話題を変える事にした。 「それに、あそこまであたしのアプローチ拒まれると、ついつい気になっちゃうのよね」 今まで、自分の求愛を拒んだ男はいない。それがキュルケの自慢でもあり自信に繋がっている。 まあ、本当はそんなことはないのだが、自分に都合の悪い事はすぐに忘れてしまうのだ。 良く言えばポジティブ。悪く言えば楽観主義者というところか。 「よく考えると彼の事よく知らないのよね。ここに来る前に何をやってたのとか。あまり自分の事を話してくれた事なんてないし」 「彼は」 そんなのでよく惚れたなという視線をタバサが向けていたが、今まで黙ってそれを聞いていたタバサが口を開く。 「少なくとも仲間のためなら命を賭けれる人。そして、その精神力は非常に高い」 アルビオンでの事を思い出す。半覚醒のデルフリンガーである程度流したとはいえ『ライトニング・クラウド』を受けて意識を保ち その後も、偽装していた空賊船に一人で乗り込み、ニューッカスル城での脱出時は、大量に血を流している状態から能力を保ち続け、ルイズを運んだ。 常人ならあの傷を負った時点で気絶していてもおかしくはない。そして止血のため赤熱した剣を傷口に刺すというあの行為。 5秒。その時間は本来なら短い。だが、激痛などが襲っている時の5秒は精神的に数倍の時間を要する。 結局は気を失ったのだが、剣を引き抜くまで意識を保っていた事にタバサは驚いたものだ。 「成し遂げなければならない目的があるはず。だから多分…無駄」 自分と同種の人間だという事は少なからず感じ取っている。 これは知らない事だが、プロシュートがイタリアに戻り、仲間達が栄光を掴んでいる姿を見届けるか、そうでなければボスにその報いを受けさせるという事と タバサが母を守り叔父―ジョゼフに、母をあんな風にした報いを受けさせる事。 行動原理としては、ほぼ同一に近い。 もっとも、はしばみ草の事は予想外だったが。 「分かってないわねタバサ。無駄、無理なんていうのは聞き飽きたし、あたしの辞書にそんな言葉は無いのよ?」 これだ。と溜息を吐きつつも、やはりこの友人が好きだった。自分には出来ない考え方ができ、それを実践できるキュルケが。 「なんにしても少し作戦練らないと駄目ね。手堅くプレゼントってのがいいんだろうけど…何かこうインパクトのあるやつでないと」 う~ん、と唸って考えるがどれも今一しっくりこない。 さらに考えるがさっきタバサが言った『少なくとも仲間のためなら命を賭けれる人』というのを思い出して頭の上に豆電球が出現した気になり手を叩いた。 「…そうよ!冒険ね…!冒険の中、あたしがピンチの時、颯爽と彼が命懸けであたしを助けてくれ…そしてそのまま…」 熱の流法に突入したご様子のキュルケさんをタバサが『巻き込まれるんだろうな』という目で見ているが気にしない。 「冒険に付き物といえばやっぱり財宝とかよね、それに地図とかも必要だし…準備するわよタバサ!」 「了解」 しゃーんなろーと叫ばんばかりに拳を天に突き上げるキュルケから目を離し本に目を戻していたが内心興味はあった。 先住魔法とも系統魔法とも違うあの力が。 老化は役に立たないが、プロシュートの居た場所には違う能力。『スタンド』と呼ばれる力には治す力というのもあるかもしれない。 毒を盛られ精神が崩壊してしまった母を治す為の手掛かりは大いにこしたことはない。だから半分呆れながらも了承の答えを出した。 2日程経過してやっとこさルイズを引き篭もり状態から連れ出したのだが、色々な条件を付けられた。 勝手に行動しないだの、マンモーニと呼ばないだの、レッスン4『敬意を表せ』だの。 面倒なのでまぁ一応は了承したのだが、初めて扱うタイプなので結構戸惑っていたりする。 「やれやれ…ペッシやギアッチョとは違った意味で手の掛かるヤツだな。…リゾットに昔、従妹がいたって聞いたが…あいつもこんな感じだったのか…?」 空を見上げるとチーム一の苦労人が特徴のある目でこちらを見ているような気がした。 昼飯を食っている時にキュルケが寄ってきていつもの事だと思いつつ続けていると 「貴族になりたくない?」 と聞いてきて思わず噎せかけた。 「別に貴族って名前には興味ねーな」 名ばかりの称号に興味など無い。それはパッショーネで十分経験済みだ。 求めるのは実利と栄光のみ。だからボスを殺し麻薬ルートを押さえようとした。 「キュルケ、平民のプロシュートが貴族になれるわけないじゃないの」 「トリステインならそうだけど、ゲルマニアなら話は別よ? お金と能力さえあれば誰であろうと土地を買って貴族の姓を名乗れるし、公職の権利を買ったり、中隊長や徴税官になることだってできるのよ」 「だからゲルマニアは野蛮――」 ルイズがそこまで言いかけたが慌てて口を閉じた。 アンリエッタが手紙の奪還を依頼してきた日の事を思い出したからだ。 あの時のプロシュートの怒りゲージは尋常じゃなかった。 あの殺意を含んだ視線で本気でヤバイと思い何もすることができなかったぐらいだ。 「?、まぁいいわ、とにかくゲルマニアじゃ実力さえあれば平民でも貴族になれるの」 「金のアテが無いな。ツテもねぇしコネも無い」 「フフ~ン、だからこれからそれを捜しに行くんじゃない」 バッっとキュルケがその場に羊皮紙の束を広げた。 「…なんだこいつは?」 その紙の束を見つめるが、地図らしきものが描いてある。 「何って宝の地図に決まってるじゃない。財宝を見つけてそれを売ってお金にして貴族の地位を買う。そうすれば好きなことができるわよ?」 「随分とまたウサンクセーな」 「あら、そりゃあ殆どがクズかもしれないけど、中には本物もあるかもしれなじゃない!『栄光』を掴むには徹底的にやらなくちゃあダメなんじゃないかしら」 暗殺者というだけあって現実主義者であり、宝の地図などというものにはあまり食い付かないのだが 列車で亀に隠れたブチャラティを探し出すために列車全体をスタンド攻撃に巻き込んだ事があるだけに、徹底的にやるという所には納得できるとこはあった。 「徹底的にか。…まぁ帰る為の手掛かりも見付かるかもしれねーしな。破壊の杖みたいなものがあるかもしれないからやる価値はあるが…」 視線をルイズの方に移す。一応条件を付けられているだけあって単独行動をするわけにはいかない。 う~~、とルイズが唸っている。手掛かりが見付かればイタリアに帰ってしまうかもしれないというのが迷いの原因だ。 数分唸っていたが 「…分かったわ。その代わり勝手なことしないでよね。あと……こ、この前の事…ちゃ、ちゃんと、あ、謝りなさい」 (こいつは、まだ気にしてんのか…) この前まで、着替えやらされていたせいなのだが、トドメを刺したのはデルフリンガーだ。 視線をそっちに向けると一瞬だがビクッ!とデルフリンガーが震えたような気がする。 まぁ高濃度の沸騰した塩水が入った鍋の上にデルフリンガーをロープで釣り上げ そのロープをロウソクで焼き切れるかどうかの微妙な位置に置き拷問ダンスをやっていたからなのだが。 ともかく、クラッカーの歯クソ程にも悪いとは思っていないが、色々と厄介なので折れる事にした。 その時、『泣く子は餅を一つ多く貰える』という某民族の諺が思い浮かんだのだが気にしない事に決めた。 「…悪かったな」 「それだけ?」 少しイラっときて説教しそうになるが、こらえた。この世界に来てからそっち方面に関して結構忍耐強くなったとそう思う。 というか、イタリアと同じ感覚で説教してたら色々と持ちそうに無い。主に声帯とかが。 「悪・か・っ・た・な!」 ルイズの頭に手を置きぐ~りぐ~りとイジり倒す。無論強めにだ。 「や、やめ…ていうか子ども扱いするなぁ~~~~~!!」 頭を押さえつけられもがいているルイズとほんの少しだが薄く笑っているような顔のプロシュートを見てのキュルケの感想は 「仲良さそうでいいんだけど、こうして見てるとなんか兄妹みたいよね~」 そして、黙ってみてたタバサが 「似てる」 と言うと、二人が同時に口を開き 「「一緒にすんな(しないで!)」」 と見事に声がハモった。 ギャーギャー五月蝿いルイズを黙らせるとキュルケに手筈の確認を取る。 「で、何時やるんだ?」 「やると思ったらその時スデに行動は終わっている。つまり今からよ!」 凄まじく馴染みのある言葉を聞いた気がするのだが、そこにシエスタが割り込んできた。 「わ、わたしも連れてってください!」 「ダメよ。平民なんか連れて行ったら、足手まといじゃない」 「バカにしないでください!わ、わたし、こう見えても……」 シエスタは、拳を握り締め、わなわなと震えた。 何か超スゴイ能力を持っているのかもしれないという視線がシエスタに集まる。 「料理ができるんです!」 「そりゃあな」 「「「知ってる!」」」 全員が突っ込むが、むしろ自信を持ってシエスタが答えた。 「でも! でもでも、食事は大事ですよ? 宝探しって、野宿したりするんでしょう? 保存食料だけじゃ、物足りないに決まってます。わたしがいれば、どこでもいつでも美味しいお料理を提供できますわ」 はしばみ草を食べられる味覚のプロシュートとタバサを除いた二人は根っからの貴族であり不味い食事などに耐えられそうに無い。 シエスタ、キュルケ、ルイズがまだ何か言っているようだがプロシュートは一人で考え事をしていた。 (金はある事にこしたこたぁねぇがチームの運用関連はリゾットに任せっきりだったからな…) 帰るために、情報を集めねばならない。そうなれば必要になるのは金だ。 ルイズもまぁ手を貸してくれるかもしれないが、そうするとさらに借りを作る事になり堂々巡りになる。 (あいつは、経営者やっても結構巧くやるかもしれないな) こうして考えると、暗殺チームがリゾットの手腕によって維持されていたというのがよく分かる。 「仕事はどうするのよ?勝手に休んでいいの?」 「マルトーさんに『プロシュートさんのお手伝いをする』って言えば、いつでもお暇は頂けますわ」 どうも何か少しばかり勘違いしているマルトーの事だろうから多分そうなるのだろうが。 「分かったわ。勝手にしなさい。でも、言っておくけど、危険よ? 廃墟は遺跡や森、洞窟には危険な敵がたくさん居るんだから」 「へ、平気です! プロシュートさんが守ってくれるもの!」 そういって、シエスタがプロシュートの腕を掴んだのだが、ルイズの方は腕に当てられた双球をジト目で見ている。 「だから、守る事に適した能力じゃあない」 「…そういえば、グレイトフル・デッドだっけ?あれって一体なんなの?」 「まだ、デルフにしか話してなかったな。…まぁそのうち説明してやる」 タバサもしっかり聞いていたりするのだが、直接説明したのはデルフリンガーだけだ。 キュルケ、ルイズは今、説明して欲しそうな顔をしていたが、この場合プロシュートがそのうち話すと言っているので今は聞き出す事は不可能だろうという結論に達し 納得はいってない様子だったが、頷くと、一同を見回し、高らかに宣言した。 「それじゃあ準備して、いやむしろ準備した!なら使ってもいいわ!」 『それ』は消去されたはずの存在だった。 だが、ほんの一部が完全に消去される前に、何の因果かこの地に流れ着いた。 『それ』は最初は、ほぼ無意識に動いていた。 ただ、己を維持するためだけに。 少しづつ、少しづつ、栄養を得ると、ほんの少しだが『成長』した。 『成長』するにつれ、本能がさらに栄養を求めた。 求めるにつれ、『飲む量』も増えていった。 一先ずだが本能が満たされると何かを思い出そうとする。 完全ではない。体も本来の2/3程度だし思考能力や記憶も断片的なものしか無い。 「……『ここ』…いっ……ど……すか?」 誰かに問うが、その誰かすら思い出せない。 もちろん、その誰かからは返事は無い。 「…ど…し……たか?……ー…」 しばらく経っても何も無いので『それ』はその場所を動く事にした。 「NGUUUUUUUIYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」 オーク鬼―好物が人間の子供という豚の頭を持った醜悪な生物が奇声を上げ叫ぶ。 自分達の縄張りに火の跡。つまり敵であり、餌がいるという事だ。 十数匹のオーク鬼が建物から飛び出てくるが、めいめいに奇声を上げ猛る。 「ポルポを2周りぐらい小さくすりゃあ、あんな感じになるか?」 「兄貴のとこにもオーク鬼って居るんだな」 「いや、ポルポは一応人間だぜ」 「それで人間ってオーク王間違いだろ?」 「……可能性はあるな」 プロシュートとデルフリンガーが軽口を叩くが、他の三人(シエスタは退避)はオーク鬼相手という事で結構緊張している。 「なんであんなに余裕あるのかしらねー。まぁそこが頼もしいとこなんだけど」 キュルケが木の上から、一人と一振りを見ているが、オーク鬼が集まっている中心点から爆発が起こった。 「PUGIYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」 オーク鬼が2~3匹吹っ飛ぶが、厚い皮下脂肪と皮に阻まれ致命傷になっていない。 続けて爆破しようとするが、後ろから無数の氷柱が飛来し、負傷しているオーク鬼に突き刺さった。 タバサの得意呪文『ウィンディ・アイシクル』がオーク鬼にトドメを刺し、それに続いてキュルケが『フレイム・ボール』でもう一匹の頭を焼き尽くした。 「こ、この!」 タバサとキュルケは強力な呪文を連射する事はできないが、ルイズの爆発は別だ。例えスクウェアクラスの呪文だろうとコモンマジックだろうと同じ爆発を引き起こす。 「AGIIIIIIIII!!」 オーク鬼達はメイジとの戦いが一瞬で決まる事を熟知している。斃された仲間は二匹だったが…この爆発の数は異常だ。 さっきの攻撃と合わせても十数人の数のメイジと誤認しても無理のない事だった。 数が同じ程度ならメイジを相手にするのは不利だ。そう思ったのか一匹のオーク鬼が逃げる。 その逃げ出した先に右手に剣を持った男が逃げ道を塞ぐように現れた。 メイジならヤバイが剣を持っているという事は戦士だ。 訓練を受けた人間の手練の戦士の五人分に相当すると言われているオーク鬼からすれば、鎧袖一触の存在であり一瞬でカタが付く。 人間大の大きさの棍棒を男に向かい振るうが当たる手前で何かに止められた。 「パワーだけは…まぁBってとこか。人外に広域老化がどれだけ効くかどうか分からなかったが、その脂肪で燃焼してるだろうから内側からよく効くだろうよ」 「豚だな、豚」 何かに掴まれている棍棒を振り解こうとするが、力が入らない事に気付いた時はもうスデに地に崩れ落ち天寿を全うするハメになった。 老死したオーク鬼を一瞥すると首から頭蓋骨の首飾りをしているのを見つけた。 獣特有の悪臭が鼻をつくがそれを見ても別段、特別な感情はしない。 生きるために殺すという事に、暗殺稼業で生き延びてきた自分がどうして怒りなどという感情を持てようか。 いや、むしろ報酬などの俗なものが無いだけ、オーク鬼の方がまだマシかもしれない。 「……どっちが化物だかな」 「なんか言ったか?」 「いや…それより残りを始末するぞ」 残り12匹が固まってこちらに向かってくるが、老化が人間と同じように通用する以上、遠慮する必要は無い。 「グレイトフル・デッド!」 メイジの群れ(オーク鬼はそう思っている)から逃げ出してきたオーク鬼がこちらを何の感情も持たない視線で見据えているプロシュートに気付くと本能でヤバイと感じた。 ただの人間に負けるはずはないという気はあるが、本能がヤバイと告げている。 それが何か分からないが、どう足掻いても逃れられないものだという事は本能で理解した。 だが、経験と常識でそれを無視し、叫び声を上げながら襲い掛かったのだが、敵の動きが妙に早い事に気付く。 4匹が首を落された時点でようやく気付いた。敵が早いのではない。自分達が遅くなったのだと。 最後の一匹になり、周りの死体を見た瞬間さっき感じた逃れられないものの正体を悟った。 それが、生物全てが逃れられない『老い』であるという事を。 プロシュート一人でオーク鬼12匹を三分で始末したのだが、対生物相手の集団戦闘こそグレイトフル・デッドの真骨頂だ。 体温を下げられない限り何匹居ようと、それが変わるわけではない。 「相変わらず、無茶苦茶な魔法ね…」 「魔法じゃあねぇ。まぁついでだ、一息ついたら説明してやる」 シルフィードも上空から降りてくるが、フレイムは体温の下げようがないので広域老化に巻き込まれたら、それこそ即死しかねないので自宅待機だ。合唱 もちろん、射程範囲内の全員は氷を持っている。キュルケの場合、『フレイム・ボール』使っただけちょっと危なかったのだが、その分氷を多めに持っていた。 「さすがダーリン!一人でオーク鬼を12匹も倒しちゃうなんて!」 「凄いです!あのオーク鬼たちを一瞬で!プロシュートさん凄いですっ!」 木から下りてきたキュルケと物陰に隠れていたシエスタがプロシュートに同時に抱きつくが、ルイズはそれを見て、む゛~~、と唸っている。 タバサは老死したオークを杖で突いたりしていた。ラ・ロシェールの酒場でも見たがあの時はゴタゴタがあってよく確認する暇が無かった。 (やっぱり、老化してる…これがスタンド) 驚くと同時に少し恐怖する。先住魔法でも系統魔法でもない、ある意味『死』を司るような『虚無』でもできるかどうか分からない力が。 プロシュートが居た場所には、こんな使い手がゴロゴロいるという事だ。 だが、それだけ期待値が高いということでもある。 「さて、この寺院の中の祭壇の下にはチェストが隠されてて その中には司祭が寺院を放棄して逃げ出す前に隠した、金銀財宝と伝説の秘法『ブリーンシンガメル』があるって話よ」 「ブリーンシンガメルってなによ?」 「黄金でできた首飾りで、『炎の黄金』で作られているらしいのよ。聞くだけでグッくるわね!」 キュルケが興奮気味に喚きたてるが、冷静組みの二人と一振りは醒めた目でそれを見ている。 「兄貴はどう思う?」 「…あるわけねーな。逃げる時隠す余裕があんなら持って行くだろ。大体なんで数十年前程度に逃げて放棄したもんに地図があんだよ」 「はしばみ草を賭けてもいい」 ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/946.html
かつての名城と謳われていたニューカッスル城だが今現在は限りなく無残なものだった。 城壁は崩れ去り死体がそこら中に転がっている。 一方からしか攻撃できないという地形的要因もあり密集隊形のレコン・キスタ軍に魔法と大砲の一点集中砲火が加えられ莫大な被害を出した。 だが、先陣がそれを突破し兵が城の中に雪崩れ込んでしばらくすると異変が起きた。 城に突入した先陣の兵のほとんどが帰ってこなかったのである。 何名か帰還してきてから最突撃を慣行したものの、士気はガタ落ちで傭兵達は進もうとしなかった。 それでも、貴族の直属部隊が突入したのだが城の中の光景は常軌を逸していた。 敵味方を問わず全ての生き物が枯れ木のように朽ち果てている光景を見て誰が驚かずにいられようか。 本来、落城した城で見られる財宝漁りや死体からの戦利品の収拾は全く行われていない。 呪い、先住魔法、などと騒がれそんな気になれないでいた。 老化に巻き込まれ運よく生き残った兵士達は口を揃えて『全ての物が朽ち果てていく様子は悪夢を見ているようだった』と答え その日からニューカッスル城は『名城』から『死城』と名を変え、その攻城戦は『ニューカッスルの悪夢』と永劫に語り継がれる事となった。 (しょ…~~~~がねぇ…ァ~…) (最後の…を振り…ぼれぇぇぇぇ…) (ひっかか…やがっ…なッ…ザマぁ…やがれ…ェーーッ…) (おれ…ベイ…ィ・フェ…スの残…をひ…いい…いいッ…) (なん…って…エ…エェェ…ェェ…) (ひと…では…死…ねえっ…) ……… ……………… ……………………………… 「…ってぇ…」 何時もとは比べ物にならないぐらい力ない声でそう呟き身を起こす。 思考が重い。手で額を押さえる。 また、あの夢を見たのだが…今回は違っていた。 仲間の最期の声が聞こえ、それがより夢のリアリティさを上げていた。 ここに着てからこれだけ時間が経過しているのだ。いい加減それがどういう事か認めざるをえなかった。 (あいつらのこった…ボスを倒してるか…全滅してるかのどっちかしかねぇな…) 残りの仲間はペッシ、メローネ、ギアッチョ、リゾットの四人。全員がそれ相応の戦闘能力を持っているがブチャラティ達の能力と覚悟も侮れない。 それは直接ブチャラティと戦った自分が一番よく知っている。 (あいつらがボスを倒してたとしても今更このオレがどの面下げて会えるってんだ?ええ?おい?) 深く息を吐き出した結論は一つだった。 「ったく………戻れるわけねーな」 あいつらなら受け入れてくれるだろうが…自分自身がそれを享受できないであろう事は誰よりもよく知っている。 珍しく思考が弱気になり、視線を宙に向けると扉が開きシエスタが入ってくるが身を起こしているプロシュートを見るなり一気に泣き顔になった。 「……よか…ったぁ…ほん…とに」 このギャング実にこの様な場面に遭遇した事が無い。寝込みを襲われた事は腐る程あるが起きてすぐ人に泣かれた事など全く無い。 いや、起きてすぐ説教かましてペッシを半泣きにさせた事はあるが、少なくとも何もしてないのに泣かれた事は無い。 どう対処していいか分からずに思わずグレイトフル・デッドを発現させるが、意味ねー事に気付き頭を掻いた。 「……オメーが居るって事は場所は学院か。……何日だ?」 この体のだるさからみて結構日数が経っているのだろうと首をコキャっと鳴らしながら予測を付ける。 「ふぇ…7日も…目が覚めなかったんですよぉ…」 「7日だと?頭がイテーわけだ…」 (傷もあるがそれに加えてグレイトフル・デッドを限界まで使ったのもあるな…) 「血まみれのプロシュートさんを見た時…死んでしまったのかと思ってましたよぉ…」 このギャング説教はAだがこの手の対処能力はブッチギリでEである。 (こういうのはメローネ担当なんだがな…) 半分顔を引きつらせながら相槌を打つがグレイトフル・デッドをフルパワーで使った時以上に精神力を使っている。 「いいからちったぁ落ち着け…死んでねーんだから泣くこたぁねーだろうがよ…」 「で、でも…」 まだ泣いているシエスタを見て一瞬、説教という選択肢が頭に浮かんだがさすがに自分の身を案じているカタギの女の子に説教かます程空気が読めないわけではない。 まぁそれでも相手に非があれば誰であろうと一切容赦しないのがプロシュートのプロシュートたる由縁なのだが。 「あーもう、泣くな。こっちまで気が滅入る」 ボフッっとシエスタの頭に手を置いてワシャワシャと弄くりたおす。 「え…!いや…あの…その…すいません…」 泣き顔から一気に顔を赤くさせしどろもどろに何とか答える。 (他人から心配されるか…今までんな事は無かったが…まぁ悪くはねーな) 「…そういやルイズはどうしてる?あいつも気絶してたはずだが」 「ミス・ヴァリエールの怪我は軽症でしたので治療を済ませた後、ずっとプロシュートさんの看病をしてらっしゃったんですよ」 その言葉に思わず眉を上げる。 「治癒の呪文の秘薬の代金もミス・ヴァリエールが出してくれたので心配しなくても大丈夫ですよ」 こちらの貨幣価値はまだよく分からないが秘薬というからにはそれ相応の値がするという事だ。 「…また借りができたな」 「?何か言いましたか?」 「いや、こっちの事だ」 そう言いながらベッドから起き上がり立とうとするがそれをシエスタが慌てて止めようとする。 「ま、まだ無理ですよ!あれだけ血を流してたんですから!」 手を握り力を入れる。少し力が入らないが問題ない範囲とし立とうとするが、重大な事に気付いた。 「……ヤバイな。着るもんがねー」 至るところが破れ血に塗れていたスーツを思い浮かべる。誰がどう見ても再起不能だろう。 「それでしたらミス・ヴァリエールからこれを預かってるのですが……本当に大丈夫なんですか…?」 そう言って渡された物は例によってここの教員用の服だった。さすがに生徒用のは無理があるのでルイズがコッパゲに頭下げて借り受けてきたらしい。 「無いよりかマシってとこだな…」 若干不満気に袖を通すが、贅沢は言ってられない。ちなみにメイジではないためマントは付いていない。まぁ付いていたとしても付けないであろうが。 着替えを終えたプロシュートを見たシエスタだが、妙に教師姿が似合っているプロシュートを見て目を丸くしていた。 プロシュート兄貴―ギャング界において最も教師が似合う男 担当教科『国語』 教える物『栄光のつかみ方』 多分、世界が一巡したら教師やってる。いや絶対。 「…似合って…ますね」 一瞬、黒板をバックに貴族のマンモーニ連中を説教しながら授業している己の姿を思い浮かべて胃が痛くなった。 「冗談じゃあねー…マンモーニは一人で十分だ」 「でも、ふふ…本当に良く似合ってますよ」 ようやく笑ったシエスタを見るが、笑われてるだけなのも何なので少しイジっておく事を心に決めた。 「…まぁいい。世話になったみてーだから何かあれば言ってくれて構わねーぜ」 そういいながらまたボフッっとシエスタの頭に手を置きイジる。 傍から見ればまぁ微笑ましい光景であろうが、やられている当人はオーバーヒート寸前というところである。 「ひゃ…!いえ…わ、わたしなんかなにも…してませんし…」 十二分にテンパっているのを確認すると『計画どうり』という幻聴が聞こえたが、まぁそれを無視して部屋を出た。 (ああ…それにしても……金が欲しい…!!) のっけからどこぞのアゴが妙に尖った博徒のような思考を張り巡らせているのは我らがルイズだ。 (なんで、たかが服なのにあそこまでするのよぉ~~~!) 起きる前に再起不能になったスーツの代わりを新調しそれを渡して思いっきり恩を売り掃除、洗濯等の雑用も押し付けるつもりだったのだが… 高かった。異様なまでに高かった。 見たことも無い素材。そして技法。それに加えて他の注文を押しのけて最優先で同じ物を作る。 職人総出の徹夜作業が続き、なおかつ他の顧客への迷惑料も換算するとえらい額になり 試作10号にしてやっとこさほぼ同じ物が完成したのだが、今朝届いた請求書を見てブッ飛んだ。 普段なら払えない額ではないだろうが プロシュートの秘薬の代金。キュルケとの意地の張り合いの結果自腹出したデルフリンガーの代金。あの時飲みつくした酒の補充代で金が無かった。 ルイズ財政破綻一歩手前というところである。 『ぐにゃ~~』という音と共になんか周りが歪んで泣きそうになった所に後ろから声がかかった。 「よ」 「わひゃあ!」 「…お前は、驚く事しかできねーのか?」 「うう、後ろから急に声かけられたら驚くに決まってるじゃない!」 「ちったぁマシになったと思ったが…まだまだマンモーニだな」 「そんな事言うためだけにわたしを驚かしたんじゃないでしょうね…?」 あの土壇場で自分を信頼していてくれていたが、もう評価を落されたんじゃあないかと少し不安になった。 「ああ、秘薬ってやつの代金だしてくれてたみてーだな…一応礼は言っておく」 「あ、あんたはわたしの使い魔なんだから当然じゃない!…って一応ってなによ一応って!」 「オメーの爆発の分も怪我に入ってんだからな」 「な、なななによそれぇーーーー!あんたがやれって言ったんじゃない!」 表情に出さず心で薄く笑いながらそれに返答する。 「…冗談だ。まぁあの場面でよくやった方だな」 「ふ、ふん!わたしは貴族なんだから当然よ!」 シエスタと同じように頭に手乗せてイジってやろうと思ったがコイツの場合面倒になりそうだと思い止め、寝ている間に何かあったかを聞き出す事にした。 (そーいや抜き取った宝石の事も忘れてたが…まぁそっちは今は言わなくてもいいな。) 「ウェールズから姫さんに伝言頼まれてたんだが…言いそびれたな。どうだった?」 「……姫様は殿下に亡命を勧めてられてたわ ……気丈に振舞ってたけど姫様の悲しみは深かったわ。…やっぱり殿下を気絶させてでも連れ帰った方がよかっわぎゃ!」 ショボーンと俯いているルイズの頭を叩くと寝起きの説教が開始された。ただしプロシュートも寝起きはかなりの低血圧のためその温度は低いが。 「てめーでやった事を後悔するんじゃあねぇ…この際ハッキリと言っておくが 『ブッ殺すと心の中で思ったならその時スデに行動は終わっている』ってのは生半可な覚悟で『ブッ殺す』と思うなって事なんだからな…」 暗殺チームは別に趣味で殺しをやっているわけではない。 生きるために仕事でやっているからこそ相手を殺すと思うという事は、己の身にそれ相応の覚悟と責任が圧し掛かるという事だ。 「分かってるわよ…というかその考え方どうにかならない?心臓に物凄い悪いんだけど」 「ならねー」 「……はぁ…まぁ…いいわ。期待してなかったし…朝ごはん行くわよ」 その相変わらずの即答ぶりに肩を落すルイズを先頭に食堂に向かった。 意外かもしれないがプロシュートが朝食事時に食堂に入るのはこれが初めてである。 前述のとおりかなりの低血圧に加え元々朝食は摂らない方なので外で待機しているかそこらへんをうろついているかのどっちかだったが 今回は7日間ぶっ続けで寝ていたのでさすがに何かを食う気になっていた。だが… 「…なんだこいつは?」 「なにって…朝食だけど?」 例によって無駄に豪華である。ヘヴィと言っても過言では無い。 「今日から皆と同じ物食べていいわ。べ、別にこの前助けてくれたからってわけじゃな「重い」だから…って、ええ?」 「重い。朝からずっとこれだったのか?…ポルポみてーになんぞ?オメー…」 仲間内ではポルポとプロシュートの食事量を足して2で割れば丁度良いんじゃあないかと言われているぐらいだ。 ルイズのポルポって誰よ?の疑問にポルポの特徴を挙げていく 「まぁ部屋から出れねーぐらいの豚だ。オレも初めて見た時はベッドかと思ったぜ」 ものすごーく夢に出てきた精霊様と姿が似ていて思わず視線が杖に移り…一気に食欲が減退した。 祈りが唱和され食事が始まるが、ルイズのペースはめっさ遅い。 プロシュートの方はだるそーにパンと肉に少し手ぇ付けただけでサラダに突入している。 見ているだけで胃が重くなるのだが、まぁサラダなら別だ。 それを見たルイズも半分放心したように無意識にサラダを口に入れたが… 「ふぎゃ!…にっがぃ…これ、はしばみ草じゃない!」 水で後味を流し込みながら視線を横に移すが、プロシュートのサラダの皿は空だったッ! 「……なに?なんで皿に何も乗ってないのよ」 「そりゃあ食ったからな」 「…ウソぉ」 「まぁ不味くはねぇ」 サラダを口に入れる瞬間『ロオォォォォドオォォォォォォ』という聞き慣れた幻聴が聞こえたのだがまぁ特に気にしないで無視した。 ただ単に味に対して無頓着であるというのもあるが、それを知らないルイズはドン引きだ。 「外で待ってっから食ったら来い」 それだけ言うと席を立つプロシュートを放心したように見送るルイズだったがやっとの思いで口を開いた。 「あ、ありのままに(ry」 そして、そのポルポル君と化しているルイズを無視し出口に歩いているプロシュートを某首斬り判事神父の如く眼鏡を光らせ見ていたタバサが低く呟いた。 「……同志」 ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/661.html
ニューカッスル―王軍最後の拠点でもあるこの城は岬の突端に聳えるようにして建っている。 雲に隠れつつ大陸の下を潜り込むように進路を取る。制空権は反乱軍旗艦『レキシントン』が押さえておりこの船では相手にすらならないらしい。 「あの艦の反乱が全てが始まった。我々にとって因縁の艦さ。このまま雲中を進み 大陸の下からニューカッスルに近付く。そこに我々しか知らない秘密の港がある」 その言葉どおり大陸の下には直径300メイル程の穴が開いている場所がありそこをハリアーのように垂直に昇っていく。 しばらく昇ると白い光るコケに覆われた鍾乳洞に出る。 これが港らしくもやいの縄が飛び岸壁に引き寄せられるようにして係留され木でできたタラップが取り付けられた。 老メイジが現れウェールズと会話をしているがその様子と会話を見てプロシュートが検討を付ける。 (ハナっから死ぬ気か。この腑抜け野郎がッ!) 自分達チームならどんな状況に追い込まれようが死ぬつもりで行動したりはしない。 『死ぬ覚悟』は常にしているが、最初から『死ぬつもり』なぞ毛頭無い。 どんな、劣悪な状況であろうとも常に相手のノドに食らいついてきた。 だからこそ暗殺という死亡率が高い任務でもあの時まで9人全員欠ける事無くやってこれたのだ。 キュルケとタバサの方はその辺りの事は多少慣れているらしいが、やはり明日全滅する軍を見て迷いのあるような目をしている。 そして、ルイズの方も『敗北』という言葉に顔色を変えている。 ウェールズ達が明日死ぬかもしれないというのに心底楽しそうに笑っているのを見てそれが理解できなかった。 「さて…手紙だったね。私の部屋に保管してある。付いてきたまえ」 ルイズとワルド、そして多少イラついているプロシュートと共にウェールズの自室に向かう。 ちなみにキュルケとタバサはトリステインの者ではないという事から別の場所に居る。 「下手に関わるとロクな事にならないからねー」 「同感」 もう片足突っ込んだとこまで関わっているのは気にしない。 ウェールズが椅子に座り机から宝石が散りばめられた小箱を取り出しネックレスの先に付いている鍵でそれを開けた。 蓋の内側にはアンリエッタの肖像がある。 その中からボロボロになった手紙を取り出す。スデに幾百と読まれてきたであろう手紙をもう一度だけ読むと 手紙を丁寧にたたみ封筒に入れルイズに手渡した。 「これが姫からいただいた手紙だ。この通り、確かに返却したぞ」 「ありがとうございます」 「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル号』がここを発つ。それに乗ってトリステインに帰りなさい」 ルイズがその手紙を食い入るように見ていたが、やがて意を決したかのように口を開いた。 「あの……殿下。さきほど港で栄光ある敗北とおっしゃっていましたが…王軍に勝ち目はないのでしょうか?」 「我が軍は三百。それに対する敵軍は五万。勝つ可能性など万に一つもありはしない。我々にできる事は勇敢な死に様を連中に見せつけるだけのことだ」 「殿下の討ち死にされる様も、その中には含まれるのですか?」 「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」 そのやりとりを見ていたプロシュートだが 『真っ先に死ぬつもり』 これを聞いた瞬間動き出していた。 (腑抜け野郎がッ!テメーが先に死んで後は他人任せかッ!?このマンモーニがッ!!) 上に立つ者である以上、最期の最期まで指揮を取る必要がある。 暗殺チームもそうだ。リゾットが居なければチームなぞとうの昔に瓦解している。 それだけ皆のリゾットに対する信頼は厚かったし、その信頼に答える事ができる能力をリゾットは持っていた。 そして、その責任を負うべきはずの者が『真っ先に死ぬ』などという事は責任を放棄して逃げ出しているとしか受け取れない。 だが、プロシュートがウェールズに肘撃ちをブチ込もうとするが次のウェールズの言葉でそれを中止する。 「…ここで我々が『誇り』を見せなければ、我々の為に戦い死んでいった兵達になんと言って詫びればいいか分からないからね」 『誇り』…自分達暗殺チームが二年前にソルベとジェラードをボスに殺されてから今まで失っていたものだ。 それを失っていたからこそ『誇り』を見せるという事はプロシュートにもよく理解はできた。 もちろん、『真っ先に死ぬ』などという事は論外だが、ひとまずこの場は抑えておく事に決めた。 鉄拳制裁をしようとしていたプロシュートに気付かずにルイズが一礼に口を開いた。 「殿下…失礼を承知で申し上げたい事がございます」 「なんなりと、申してみよ」 「…この任務をわたくしに仰せつけられた際の姫様のご様子…そして先ほどの小箱の内蓋の姫様の肖像 手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔といい…もしや、姫様とウェールズ皇太子殿下は………」 「恋仲であったと言いたいのかね?」 「そう想像いたしました。とんだご無礼を、お許しください。してみるとこの手紙の内容とやらは……」 「恋文だよ。君が想像しているとおりね。彼女が始祖ブリミルの名において永久の愛を私に誓っているものだ。 この手紙が白日の下に晒されればゲルマニアの皇帝は重婚の罪を犯した姫との結婚を破棄し同盟は成り立たなり一国で貴族派に立ち向かわなくてはなる」 「殿下、亡命なされませ! トリステインに亡命なされませ!」 ワルドがよってきてルイズの肩に手を当てるがそれでも収まらない。 「お願いであります。わたし達と共にトリステインへいらしてください!」 「それはできんよ」 「…姫様の願いだとしてでもですか?姫様のご気性からしてご自分の愛した人を見捨てるとは思えませぬ! おっしゃってくださいな殿下!姫様は、たぶん手紙の末尾にあなたに亡命をお勧めになっているはずですわ!」 「そのような事は一行たりとも書かれていない」 ウェールズは首を振り言葉を紡ぐ。 「私は王族だ、嘘はつかぬ。姫と、私の名誉に誓って言うがそんな事は書かれてなどいないよ。アンリエッタは王女だ。自分の都合を国の大事より優先させたりはしない」 だが、それは嘘だ。苦しそうな口調でそう言っている。ブチャラティでなくとも一発で嘘と分かる。 「……君は正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、真っ直ぐで、いい目をしている。 だが、そのように正直では大使は務まらんよ、しっかりしなさい。…しかし、わが国への大使としては君が適任かもしれないな」 「明日にも滅ぶ政府は誰よりも正直だ。なぜなら守るべきものが『名誉』以外にないのだから そろそろパーティの時間だ。君達は我らが王国が迎える最後の客人だ。是非とも出席していただこう」 ルイズとプロシュートは外に出たがワルドだけはその場に居残った。 パーティは城のホールで行われた。簡易の玉座が置かれそこに現在のアルビオンの王『ジェームズ一世』が鎮座している。 明日滅ぶとは思えないような華やかさだ。 「諸君。忠勇なる臣下の諸君に告げる。 いよいよ明日、このニューカッスルの城に立てこもった我等王軍に、反乱軍『レコン・キスタ』の総攻撃が行われる」 「この王に、諸君等はよく従い、よく戦ってくれた。 しかしながら明日の戦いはこれはもう、戦いではなく一方的な虐殺であろう。朕は忠勇な諸君等が傷つき斃れるのを見るに忍びない」 老王が半ばウェールズに支えられる形で演説を始め、1~2度咳をすると再び言葉を繋げた。 「従って朕は諸君等に暇を与える。長年、よくぞこの王につき従ってくれた。 熱く礼を述べるぞ。明日の朝、巡洋艦『イーグル』号が、女子供を乗せてここを離れる。諸君等もこの艦に乗り、忌まわしき大陸を離れるがよい!」 王により出された暇。つまり自分を見捨てて逃げろと言っている。 だが臣下達の中にそれを享受する者は一人も居ない。むしろさらに老王への忠誠が高くなっているようだった。 感慨深げに目頭を押さえた老王の言葉と同時に辺りが喧騒に包まれた。 キュルケはパーティという事もありそれなりに楽しみ、タバサは亜空の瘴気と化したかの如く料理を食べ進めている。もう今にも『ガオン!』という文字が現れそうだ。 ルイズは死を前にした貴族達が明るく振る舞っているという事に感じるとこがあったらしく、その空気に耐え切れずその場から居なくなりその後をワルドが追う。 一人になったプロシュートは料理を食らうわけでもなくワインを飲んでいた。 「ラ・ヴァリエール嬢の使い魔の……」 「…プロシュートだ」 「そうか、しかし人が使い魔とは珍しい」 「フン…一つ聞くがハナっから死ぬ気か?」 ここで『そうだ』とでも答えようものなら間髪入れずに肘撃ちが飛んだのだがウェールズは違う風に受け取ったらしく笑いながら答え 「案じてくれているのか私達を!君は優しいのだな」 「…オレ達チームの他のヤツなら、例えどんな状況になろうとも死ぬことを前提に行動したりはしねぇ 『たとえ腕を飛ばされようが脚をもがれようとも』最期まで相手のノドに食らい付こうとするッ!」 プロシュートが語気を強める。一線を越えればすぐにでも『この腑抜け野郎がッ!何だ!?そのザマは!ええ!?』と言いつつ殴りかねない。 「誇りってのはオレにもスゲーよく分かる…オレ達チームも二年前それを失ったからな… だが、それでも『栄光』を掴むために戦った。『死ぬ覚悟』は常にしているが『死ぬつもり』で行動した事なんて一度も無いんだからな」 「守るべきものがある、その大きさが死の恐怖を忘れさせてくれる」 「…誇りか?」 「それもあるが……我々の敵である『レコン・キスタ』はハルケギニア統一をしようとしている。『聖地』を取り戻すという理想を掲げてな 理想を掲げるのはいい。だが奴等はその過程で流されるであろう民草の血を考えず、荒廃するであろう国土の事を考えていない」 これはプロシュートも思うところがあった。娘を奪うという目的のために列車の乗客を広域老化に巻き込んだ事があるからだ。 「だからこそ勝てずとも、勇気と名誉の片鱗を見せつけハルケギニアの王家は弱敵ではないと示さねばならぬ。 奴等がそれで『統一』と『聖地の回復』という野望を捨てるとも思えぬが…それでも我々貴族が先に立ち勇気を示さねばならぬ」 「……『覚悟』はできてるみたいだな」 「はは…覚悟ができていなければ、ここに居やしないよ」 「自暴自棄になって死ぬ事しか考えていないマンモーニなら蹴りくれてやろうと思ったがその必要は無いようだな」 「怖いな…そうだ、一つ頼まれてくれないか。 アンリエッタに会ったら『ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んでいった』と」 「オレが生きていればな」 「頼む」 それだけ言うとウェールズは座の中に戻っていく。 残されたプロシュートはまだ微妙に痛む左腕の事を思い出し治療場所を探そうとするがそこに後ろからワルドに肩を叩かれた 「…わざわざ左肩叩くって事は喧嘩売ってんのか?テメー」 「ああ、怪我をしていたんだったな。だがきみに言っておきたいことがある。明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる」 「ここでか?」 「僕達の婚姻の媒酌を、あの勇敢なウェールズ王子に頼みたくなってね 皇太子も快く引き受けてくれた。決戦の前に僕達は式を挙げる。きみも出席するかね?」 「オレ個人の任務はあいつの護衛だからな」 「ルイズなら僕が守る。それに君が残れば帰れなくなる」 「…オメーらはどうすんだ?」 「私とルイズはグリフォンに乗って帰る」 プロシュートは押し黙ったままだがワルドはそれを肯定の意と受け取ったようだ。 「では、君とはここでお別れだな」 薬を貰って痛みが和らぎ寝る場所を探すため廊下を歩いていると窓を開けて月を見ている人影を見付けた。 「なにやってやがる」 「あの人達…ウェールズ皇太子はどうして死を選ぶの?姫様が…恋人が逃げてって言ってるのに」 そう言うルイズは半泣き状態で目から涙が零れ落ちていた。 「色々守るもんがあるんだとよ」 「…なによそれ。愛する人より大事なものがこの世にあるっていうの?」 「オレが知ったこっちゃねぇがな。少なくとも覚悟はできてたみたいだぜ」 「…もう一度説得してみる」 「止めとけ」 「どうしてよ」 「あの目はオレ達が組織に反乱を起こした時の目と同じだ。だからオメーがどう説得しようと止める気はないだろうよ」 「それでも…!」 「なら、気絶させてでも連れ帰るか?オメーにそれをやるだけの覚悟があんのならやってやってもいい」 その案を本気で考え込むがさらにプロシュートが続ける 「だが、オレの見たところあの王子はそれで連れ帰ったとしても 自分一人無様に生き残ったと思い命を絶つタイプだな。その責任に耐えれるなら何時でも言いな」 「…早く帰りたい」 そう呟とさらに涙が頬を伝い地に落ちる。 「そういやオメー明日ワルドと結婚するんだってな」 「……え?」 「…聞いてねーのか?決戦前に皇太子を媒酌に式挙げるって言ってたんだがな」 「…聞いてない」 「覚悟も決めさせねーうちにやらかすのもどうかと思うが… まぁいい。オメーとワルドの問題からな…オレが口を出す事でもない」 それだけ言うと短く「寝る」といい去っていく。徹夜してたのだから当然眠い。 (本人に知らせてないってのが妙だな…気になる事もある…カマかけてみるか) 後に残されたルイズは明日急に行われる結婚という事自体を半ば受け入れられずにいる。 「……あいつが言う覚悟ってどういう事よ?」 それだけ呟くがギャング的『覚悟』をルイズが理解する事はまだできないでいた。 翌朝、非戦闘員は船への乗り込み、戦闘員は戦闘準備をする中プロシュートがワルドを見付けた。 「ここを出る前に話がある」 「式の準備で忙しいんだが…まぁいい聞こうじゃないか」 「人が居ない場所が都合がいいんでな…」 それだけ言うと来いと促し人気の無い場所へワルドを連れて行く。 「さて…話と言うのを聞こうじゃあないか よもや僕とルイズの結婚に反対してるとかいう話じゃないだろうね?」 「いや…結婚するにあたって受け取ってもらいてぇもんがあってな…」 「ほう…」 その言葉と共にワルドに近付き肩に手を当て何でもないかのように言い放った。 「『グレイトフル・デッド』っつーんだが『直』に受け取ってくれよ」 その瞬間、閃光の二つ名に相応しいスピードでプロシュートの手を振り払いワルドが離れた。 「おいおい…オレはオメーに受け取って欲しいもんがあっただけだぜ?逃げるこたぁねーだろうがよ」 「……貴様…何時から気付いた!」 「ハン!…自白したのはテメーだぜ?おい」 「なんだと…!?」 「オレはオメーに『グレイトフル・デッド』と言った事はねーし オメーを直接掴んだ事も無い。ルイズ、キュルケ、タバサを除けば知ってるのは…『土くれ』と『白仮面』だけだぜ?」 もちろんスデに死亡しているギーシュは員数外だ。 「この前は直が効かなかったみてーだが…その慌て振りからすると今は効くみてーだな…」 だが、そこに別の方向から声が聞こえる 「この前はというのは正しくないな」 後ろを振り向こうとするがその前に風に吹き飛ばされた 壁に打ち付けられ立ち上がるが再び正面を見据えるがそこに居たのは…全く同じ顔した人物…二人のワルドだったッ! 「カハ…ッ!…双子…か?随分と狡い真似を…してくれるじゃあねーかよ…」 「双子か…そんなチャチなものと比べないで貰いたいな。 風のユビキタス(偏在)……。風は偏在する。一つ一つが私自身でありそれぞれが独立した意思を持つ」 そうして分身が懐から取り出した仮面を被る なるほど、と理解した。魔力で作られた分身である以上、分身に老化が通用しないという事だ。 だが、今回は本体はそこに居る。広域老化で本体もろとも巻き込めばいいだけのことだ。 「おっと…酒場で見せたやつを使うつもりかな?止めておいたほうがいい 私だけではなく城の防衛を担っている貴族達まで巻き込んでしまっては、すぐに我が軍が雪崩れ込んでくる事になる」 射程半径200メートルにも及ぶグレイトフル・デッドの長大な射程。敵組織を纏めて壊滅させるという攻め向きの能力であり 味方が射程内に多数居る状況下では逆に不利に要因になっていた。さすがに五万という数を相手にするにはスタンドパワーが足りないし流れ弾の危険性もある。 軽く舌打ちをする、広域範囲が使えないなら本体に直を叩き込み分身を消すしかない。そう考え持ってきたデルフリンガーを握る。 「兄貴…あいつ敵だったのか!?」 「そうみてーだな、覚悟決めろよデルフよォーーー」 覚悟を決め接近すべく駆け出そうとするが意外な言葉がワルドからもたらされた。 「フッ…聞けば君はアンリエッタに『「反乱」が「愚かな行為」で「赦せない」だと?』と言ったそうじゃないか 君が元居た場所でも僕達と同じような事をしていたんだろう?そこでだ、僕達に加わる気はないか?君のその一人で何千人も相手にできる能力は正直欲しい」 「……オレにルイズを裏切れって事か?」 「違うな、ルイズは僕と結婚する。つまり僕の仲間になるわけだ。君が裏切るって事にはならないさ」 「…なるほど…な」 そう低く呟くプロシュートの声をワルドは了承と受け取った。 「了承したなら、礼拝堂に来たまえ。そこで式を行う」 「……どうやら…本気で死にてーようだな」 絶対零度の声でそう言い放つ。 「オレ達チームが組織を裏切ったのは組織がオレ達の信頼を裏切ったからだ… 分かるか?ええ、おい…?オメーはオレ達が裏切った組織と同じ事をやってんだ…そんな連中にオレが従うと思ったら、もう老化が始まってんぜ?」 その言葉に悪鬼のような形相でプロシュートをワルドが睨む。仮面をしていて分からないが多分、分身も似た様な感じだろう。 「…たかが平民に世界を手に入れる機会を与えてやったというのに、まぁいい!ルイズさえ手に入れば目的の一つは達せられるッ!!」 「兄貴!『エア・ハンマー』だ!」 「「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ…」」 本体と分身二つの声が重なり同時に魔法が詠唱されようとしている。 吹き飛ばされたせいで間合いが開いている。後ろは壁、横は回避できる程のスペースは無い。 ならば正面へ突っ込み詠唱が終えられる前に攻撃する。だが、『エア・ハンマー』の詠唱は本来殺傷能力がある呪文より短い。 こちらの射程に達するまえに空気が爆せた。 『エア・ハンマー』の同時詠唱。その威力は練兵場での手合わせで見せたものより遥かに上だ。 それを理解した瞬間風の塊をモロに食らい吹き飛ばされ壁に体の左側から打ち付ける。 風の塊に吹き飛ばされている途中背骨が軋み壁に打ち付けられた瞬間、視界が赤く染まり全ての音が途切れた。 口や体中から血を流しピクリとも動かない。 「…言ったはずだ、本物のメイジには勝てないと」 そう吐き捨てるように言うと分身が消えワルド一人だけになる。 「少々手間取ったが…礼拝堂へ行かなくてはな」 プロシュート兄貴 ― ? ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/makarusnap/pages/309.html
トップページ カードリスト(コスト1以下) 《ゼロ》 《ゼロ》 基本情報 カード名 ゼロ コスト/パワー 1/3 テキスト 公開時:次に自分がプレイするカードの全ての効果を取り除く。 収録シリーズ シリーズ3 特徴 次にプレイする自分のカードを効果なしカードに変えることができます。 《デストロイヤー》など明確な弱点が存在するカードや、《リアリティ・ストーン》など効果発動後の状況が不安定なカードに繋げると効果的です。このカードによって効果を除去されたカードは、《パトリオット》や【ワシントンD.C.】などの効果対象になり、パワーが上昇します。 「次に自分がプレイするカード」が無ければ実害もゼロなので、最終ターンで、文字通り「このゲームでプレイする最後の1枚」としてプレイするのも効果的です。コスト2相当の高い基礎パワーを持っているため、最終局面で「エネルギーが1だけ余った時」などに重宝します。 特殊な状況について ▶︎《シャーナ》の効果で出ると逆に邪魔になる 《ゼロ》はコストが1であるため、《シャーナ》の公開時効果でロケーションへ出る可能性があります。《シャーナ》がロケーションの自分側へ出た後は、追加されたカードの中に《ゼロ》が含まれているかどうかを必ず確認しましょう。 例えば、《シャーナ》の公開時効果で《ゼロ》が出た場合、そのまま次のターンに《カイ・ザー》をプレイすると、《カイ・ザー》の永続効果が除去されてしまいます。 ▶︎《バロン・ジーモ》が連れてくると邪魔になる 《ゼロ》のコストは「1」と軽く、《バロン・ジーモ》の「相手のデッキからコストが最小のカードを選ぶ」効果で選ばれやすい傾向にあります。 そのため、自分のデッキ内に《ゼロ》が残っていれば、相手の《バロン・ジーモ》の公開時効果で《ゼロ》が選択された時、相手のデッキを機能不全に陥れられます。例えば、相手がターン3に《バロン・ジーモ》をプレイして、自分のデッキから《ゼロ》が相手側に出ると、相手は《カイ・ザー》・《ウォン》・《シュリ》など「後半戦の起点となるコスト4のカード」を、ターン4で円滑にプレイできなくなります。 アップデート履歴 2022/10/18 ・初期カード(シリーズ3)として実装されました。 ▶︎カードリストへ戻る カードリスト(コスト1以下) カードリスト(コスト2) カードリスト(コスト3) カードリスト(コスト4) カードリスト(コスト5) カードリスト(コスト6以上) ▶︎トップページへ戻る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5751.html
ストリートファイターⅢ RYU FINAL より豪鬼に勝った後日のリュウを召喚 ゼロと波動 第01話 ゼロと波動 第02話 ゼロと波動 第03話 ゼロと波動 第04話 ゼロと波動 第05話 ゼロと波動 第06話 ゼロと波動 第07話 ゼロと波動 第08話 ゼロと波動 第09話 ゼロと波動 第10話 ゼロと波動 第11話 ゼロと波動 BONUS STAGE①